

優れたアートワークから生み出されるゲーム・映像で、世界中のプレイヤーを魅了しつづける、ゲーム制作会社サイバーコネクトツー。中でもアニメ『NARUTO-ナルト-』を題材としたゲーム『NARUTO-ナルト- ナルティメット』シリーズは、『.hack』シリーズと並ぶ同社の人気タイトルです。『NARUTO-ナルト- ナルティメットストーム』では、「触れるアニメ」をコンセプトに掲げ、『NARUTO-ナルト- ナルティメット』シリーズ初のPS3専用ソフトとして制作。高い映像クオリティが評価され第13回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門にて優秀賞を受賞しました。
最初に壇上に登られたのは、デザイン室チーフの三好誠氏。『NARUTO-ナルト- ナルティメットストーム』ロゴの制作過程を通して、Illustratorの活用事例を紹介していただきました。
初めてゲームをメディアに発表する時点では、タイトルロゴだけが露出することも少なくないそうです。そのロゴを見ただけで作品の持つテンション、イメージが伝わる必要があり、文字の視認性や原作のイメージを損なわない等の厳しい制約のなかで、いかにオーダーに応えるかが問われるそうです。今回のオーダーは、高性能ハードPS3で新しいスタートを切るために、今までの『NARUTO-ナルト- ナルティメット』シリーズのタイトルロゴとイメージを変えて欲しいというものだったそうです。三好氏は筆文字で表現されていたこれまでのシリーズと印象を変えるために、激しいラインで構成された文字表現で変化を付け、オーダーに応えました。さらに、タイトルの名称でもあるストーム=嵐を意識したデザインを施して欲しいとのオーダーには、ゲームの主人公ナルトの代表忍術をロゴに組み合わせることで対応されました。この際に、制作途中段階では、どのような使用方法にも対応できるよう、ロゴやキャラクターはIllustrator上でパス化し、解像度にとらわれないよう作業を行っているとのことでした。その後、ブラッシュアップを繰り返して、完成に至ったということでした。


次に紹介されたのが、人気ゲームソフト『.hack』シリーズの設定資料集。社内の膨大な設定資料を、眠らせておくのではなく、より多くのユーザー様に『.hack』シリーズの世界を楽しんでもらいたいと「制作者がつくる完全設定資料集」をコンセプトに自社制作されたそうです。こちらを引き合いに出し、レイアウトデザインの説明をされました。ボリュームある書籍であるため、InDesignとIllustratorを併用してデザインを行ったそうです。様々なジャンルの情報が混在する素材を分かりやすく、かつ見る側をダレさせないように、動きのあるレイアウト・紙面構成をするのがポイントだと語られました。たとえば、キャラクターページではキャラクターを大きめにレイアウトすることでホワイトスペースを活かし、キャラに主体性を持たせたレイアウトに。1ページに50以上の武器イラストを掲載するようなページは、単調にならないようイラストの配置に変化を付けたりといった具合です。最後に、最も重要なこととして、「素材(資料)の持つ魅力を最大限に引き出すこと」「素材を言い訳にしないこと」を挙げられました。
三好氏がデザインワーク上で強調されたのが、制作スピードの大切さ。単に“提案数を増やすため”ではなく、“良い答え”を早く見つけだすための提案制作時間を確保するために、スピードアップが重要なのだと熱弁されました。とくにタイトルロゴデザインは、タイトルが決まってからメディアに露出するまでの期間が短い場合が多いため、非常に短いスパンでの制作になることが多く、『NARUTO-ナルト- ナルティメットストーム』の場合も、製作期間は約1週間と非常にタイトだったそうです。そこで、予め方向性の変化や修正作業を想定し、適度にパーツ・レイヤーを分割しておくことを推奨されました。こういった心構えが、作品のクオリティに繋がっていたのです。三好氏の言葉からは、Illustratorの使い方にとどまらず、プロのデザイナーとしての心構えまで感じ取ることができました。