上田バロン氏大阪Keynote セッション 2

Keynote セッション 2
 FR/LAME MONGER代表
 イラストレーター 上田 バロン 氏

 大阪会場の第二回では、関西でフリー活動していく中で、様々なプロジェクトと共にイラストレーションの可能性を模索しながら多くの経験をされた上田バロン氏に、現在のメディアミックス、今後のクロスメディアの推移や、iPhone、iPad、といった新しいメディアの誕生による新しい可能性における、「Sky's the limitという考え方から発展するイラストレーションの可能性」についてをキーとして語っていただきました。

 目が特徴的なキャラクターのイラストレーションを用い、カラーや空間を生かしたインパクトのあるビジュアル制作を得意とし、広告・出版・Web・TV・ファッション・ゲーム等、メインビジュアルを展開。過去にWWD70's MANIAにてNIKEの広告、マクドナルドとのコラボ展、NHK人形劇やPerfume、R.F.S高校ラグビー等のキャラクターデザインも手がけたバロン氏。司会の紹介の後、スクリーンに「Sky's the Limit」の文字。ビートの利いたサウンドと共にスタイリッシュな映像が上映され、会場の視線はスクリーンに釘付けに。大きな拍手の中、バロン氏の登場でセッションが始まりました。

<一人では出来ないプロジェクトというもの>

 「ご覧いただいたオープニングは『BlackLion』という新しいプロジェクトのアニメーションです。映像制作は一人ではできないプロジェクトで、後でご紹介する立体物やかばん等にも発展していきましたが、イラストから発展したものをプロジェクトとして展開したひとつの作品でした。」

人の多い中でのプレゼンテーションで緊張していますが…と言うバロン氏の緊張感が会場にも伝わります。

 「『Sky's the limit』というのがどういったキーワードなのかということをプレゼンテーションの中でひもといていきたいと思います。」と、まずは自身の作品をカテゴリ別に紹介。

大阪Keynote セッション 2大阪Keynote セッション 2

<使っているのはシンプルな機能が中心>

 モノクロのIllustratorから現在のCS5へと至り、高度なことができるようになっていますが、使っている表現は非常にシンプルな機能だけです。とIllustratorの画面を開き、空を描き始めたバロン氏。今回のタイトル「Sky's the limit」は、ブラックコミュニティでよく使われる言葉で、彼が好きなBlack Musicの曲名からとったものだそうだ。一旦ペンを置き、次へ進む。

<作品紹介>
● Book & MAGAZINE

 人々に慣れ親しんでいるメディアですが、iPadの発売等もあり、プリントメディアからデジタル化というので、コンテンツがどう変わっていくのかは楽しみな部分です。広告では出来ない過激な表現もできる表紙・カバー、ダイナミックな動きはなくても読者からのリアルな反応があったキャラクターは面白かった。また本という古いスタイルのものがWebからフリーダウンロードできるようにされるのは、ある意味クロスメディアではないかと思います。

 NIKEの雑誌広告、憧れのメディア・絵本からは、神戸大学の教授からの依頼のあったマーケティングの入門書、セブンティーン誌で連載したキャラクター等を紹介。

● AD & VISUAL

 広告とイラストレーションとは長い付き合いで、表現の自由度、企画の面白さであったり、展開されるのが町中であったり雑誌媒体であったり、あらゆる部分で存在感を発揮出来ると思います。
バーゼル見本市でも使用されたセイコーインスツルのイメージビジュアルから。架空のエアラインを想定し、世界観やストーリーを考え、キャラクターをデザイン。時計のコンセプトである「旅」をテーマに、ひとつのイラストに展開しました。時計のデザインに使われているモチーフ(蝶やフルーツなど)をイラスト内にも散りばめました。
日立コミュニケーションズの会社案内のためのパンフレットから。シークレットエージェントを想定し、登場人物それぞれの表の顔、裏の顔といった設定を考えて制作しました。ひとつの世界観を作るのが楽しい仕事でした。
東京モーターショーでホンダのキービジュアルから。エコや都市に住まう人たちの日常と次世代テクノロジーをテーマに描きました。写真では難しい部分を柔軟に描けるイラストレーションの面白さを実感しました。
リアルなファッション性のあるイラストとして、docomoの携帯機種のビジュアルではティーンメンズを。東京ガールズコレクションではファッションを楽しむ女の子をテーマに。世代に共感してもらえるようなファッションや流行をしっかり取り入れたイラストレーションに。

● MUSIC & ENERTAINMENT

 アーティストのジャケットというのも憧れのメディア。似顔絵の要素を必要とし、写真等いろいろなソースをもとに描きました。描いたアーティスト達から喜んでもらえるという事も含め、新しい経験になりました。

 EXILE、mihimaruGTのビジュアルや、劇団発砲・B・ZINの公演ポスター、アーティストキャラクターの擬人化、Perfumeの3Dキャラクター等を紹介。

● TV & AMUSEMENT

 イラストのキャラクターを元にプロの手で人形が制作されました。じっくりと作品を手作りしていく制作現場。その姿勢にクリエーターとして刺激され、感銘を受けました。

 NHKの子ども向け人形劇のキャラクター、ゲームキャラクターの紹介。

大阪Keynote セッション 2大阪Keynote セッション 2大阪Keynote セッション 2

● CONTENTS & CHARACTER

 個性を大切にするイラストレーションを売りにしている自分にとって、キャラクターは非常に重要な部分。初の自分のキャラクター作品であったラジオ番組のキャラクターは、Webやグッズへも展開されました。

 TOKYU SQUARE、Happy Fun Radio、着フラ携帯コンテンツ・デビルマンの着せ替えケータイ、R.F.S.高校ラグビーキャラクター等を紹介。

● OTHER WORKS

 自分の中では珍しいプロジェクトを集めました。

マクドナルドとのコラボ展:月面第一号店ができたら、という設定でストーリーを想定し、大阪アメリカ村店内にビジュアル展開されました。

スターウォーズコミック:ルーカスフィルム公認のアンソロジーコミックに参加しました。アナザーストーリーということで4P程度の話を描きました。

バッグテキスタイル:自信のイラストがバッグになるとともに店舗にも展開されました。

ファインアート:京都のオーベルジュの茶室に飾られた障壁画を制作。初めてのファインアートで、1点ものにつき、越前和紙や金箔を使ったりと、素材や手法にかなりのこだわりを作品に込めました。多くの匠の方々に出会い、作品制作に協力していただけたことはとてもレアな経験でした。

Google chrome:世界に向けての作品ということもあり、普段の国内での創作活動では得られない海外からの、特に予想もしていなかったブラジル在住の方からの嬉しい反応もあり、海外でも受け入れられたことは自信になりました。

avantrigger:イラストから飛び出したプロダクト。苦労しましたが2年半程かけて完成させました。イラストレーターが自転車をデザインするにあたり、全ての行程にメーカーと一緒に関われたという経験は、これからの活動におけるイラストからのさまざまな発展の可能性を感じました。

BlackLionとクロスメディア展開:架空に作り出したキャラクターからインスパイア。革新的な大人のためのダレスバッグの限定版を制作~映像化や立体化まで。実際には存在しないものを立体化する為に普段は考えない、見えない部分までを表現したり、イメージの映像化を行いました。一つの表現で完結できない部分をいろいろな人の手を借り、協力し合うことで具現化していくことができるというのがBlackLionプロジェクトを通してやりたいことで、これはクロスメディアだと思います。

 バロン氏は「Sky's the limit」をひもとく前に…と、WACOMの無線タブレットを導入したということで、コードレスタブレットとペン、Mac BookでIllustratorCS5のデモを行いながら、語るということに挑戦。

 まず、「くま」を描きながら、映画やBlack Musicにインスパイアされる部分が強く、ギャングやマフィアみたいなちょっとどろどろしたキャラクターが好きだと話され、「くま」が彼にとってなぜ重要なファクターなのか、想定するストーリー、世界観を語られた。じゃまにならない限り、バロン氏の作品には隠しキャラとして「くま」が登場しているそうである。「くま」が描けたところで遠近グリッドを表示、CS5の新機能のデモンストレーション。奥行きが表現できるあたりは注目する機能で、今後使い方を研究したいとのこと。それから、OSAKA、TOKYOという文字を立体的に描き、「大阪はよく東京と敵対するようなことを言われるが、敵対するのではなく、自分の経験から言えば、大阪でもやり方によっては東京の先端のクリエーティブに関われるし、むしろうまく協調しながら自身の活動フィールドにする方がいいと思います。テーマである「Sky's the limit」の意味としては…」と「くま」の頭上に空をどんどん描き足していきながら、「クリエイティブの立場からひとつずつ壁を超えていくような感じで考えていて、もともと何もできなかったところから始まり、一つひとつのプロジェクトとの出会い、人との出会い、チャンスとの出会いという空が拡がっていくように思います。この言葉は直訳するのではなく空に限界はない。つまり無限の可能性があるという言葉。紹介した一例のようにイラストレーションという表現は、ジャンルや国の壁を越えていく可能性があるということを伝えたい。クリエイティブの世界は、革新、新しい表現、新しい感動とか、常に最先端の部分で表現していくもの。電子書籍等、デジタル化によって、新しいメディア、新しい感性、新しい価値観が生まれてくるのだろうと思いますが、新しい部分を歓迎し、それぞれの立場でデジタルを駆使しながら、すばらしい未来を築けるのではないかと思っています。」と締めくくられました。

<<前のページ