講師は、こびとのくつの社長である工藤美樹氏。こびとのくつさんはトップクラスのアートディレクターやデザイナー、写真家と組んで大手企業の広告物を手がけられている画像編集のプロ集団。社員数は10名で、制作環境はMac Pro 3.2GHz Quad Core Intel Xeon × 2(メモリ:10GB)、メインモニター(ナナオのColorEdge CG211)、サブモニター、A3タブレットなど。Photoshop での作業時はサブモニターに膨大なブラシが登録されたパレットが画面一面に表示されています。レタッチする際にトーンジャンプを起こさないようにするため、ブラシの中にノイズを仕込んだものも多数用意しているそうです。
レタッチ(こびとのくつさんでは、リタッチャー/ビジュアルテクノロジストと呼ばれています)の仕事内容について「私たちが携わっているのはアートではなく広告ですので、商品のコンセプトやターゲットなどをきちんと理解した上でビジュアルを作っています。ビジュアルの専門家として、その広告を展開する上で最適なソリューションを提供していくのが私たちの仕事です」と語られ、化粧品メーカーの広告物に関わった際、実際にその化粧品でメイクして、粒子感や反射率など商品の特性を理解した上で作業された具体例を挙げられました。「撮影で再現できない質感や色もあるが、その商品の特性を理解していれば、それをデジタルデータ上で引き出すことができる」と言うことです。また、一見、どこをレタッチ処理したのか判らないようなものでも、「空気感や味を出す」と言った黒子的な役割で関わっているケースや、カラーコントロールや露出などの補正的なものだけでなく、躍動感を出すために画像を傾けるなど、いわゆる“らしさ”の演出や合成作業も制作コンセプトを理解しているからこそ可能になるとのことです。
CS4は“スマートオブジェクト”や“修復ツール”“自動整列”などレタッチャーが求めている機能がきちんとフォローされていたので、躊躇することなく発売日当日に即購入されたそうです。CS4でよく使用されるツールとしては、HDRの画像を自動合成でワイドにつなぐフォトマージュ機能。また、こびとのくつさんではレイヤーが100~200階層になる作品も珍しくないそうです。以前のバージョンではレイヤーが膨大になったとき、ひとつのエフェクトがどのレイヤーでかけたのか探すのに、いちいちダブルクリックして開かないと確認できないので時間がかかっていたが、CS4ではクリックしなくてもエフェクトの確認ができ、大幅に作業時間が短縮できるので助かっているとのことです。「なぜ、これほど多くのレイヤーを残しているのかと言うと、途中で変更が出たり、もう少し違う味にしてほしいと言うリクエストに限られた納期の中で、的確に迅速に応えるため。そして、単純なレイヤー構造で作るよりも、なるべく複雑なものをシルクのように薄く重ねてデータを作って行く方が、より繊細で味わいのあるオリジナリティのある画像が作れるから」と説明していただきました。
さらにビュー機能は拡大率の制限がなくなり、作業に適した画面拡大率でレタッチできるので非常に便利と評価していただきました。「以前は25%、50%、100%表示など場合のみはっきりとした表示でしたが、CS4ではどの拡大率でもジャギーのない滑らかな表示を実現しているので、細かな作業が多いレタッチの現場ではありがたい」
工藤氏は「CS4によってデザインレベルは上がったか?」と言う質問を受けられたことがあるそうですが、その答えは「いいえ」だったそうです。「アドビさんとしては残念な答えでしょうが(笑)。もちろん、全く影響を受けないわけではないが、道具はあくまでも道具。使い手に呼応して深まって行くもの。道具に振り回されてもいけないと思っている。デザインする、クリエイトすると言うベースがあって、それをどう表現したいのかと言う想いがあってこそ、様々な機能などを使ってみることで、自分の最適表現を見つけて行くのが王道なのではないかと思っています。ただ、Photoshopは使い込むほどに様々な発見があり、深いところまで入ることができるソフトウエアです」とフォローしていただきました。
その他、CS4の“回転ビュー”ツールについて「ブラシツールなどで描写する際、ストロークしやすい角度に自由に回転させることができるので作業が非常に楽になった。以前は身体を回転させて角度を合わせていた」、また「制作途中、作品のバランスや違和感がないかなどを確認するため180度回転させて、頭と目をリセットして見直している」などの紹介がありました。
講演の最後に、本日のお土産用のティップスと言うことで“昔のアメリカの印刷物のように演出する方法”をデモしていただき会場を沸かせていました。


