[トークセッション]

 今回のトークセッションは+DESIGNING編集長の小木昌樹氏の進行で、デザイン制作会社ビーワークスの企画制作部長である丸田敏晴氏と、この厳しい時代で「デザインをビジネスとして、どのように成立させて行くか」について対談していただきました。

 ビーワークスさんは出版関係のデザイン制作が約8割、その他、Webのデザイン制作、ゲーム開発、セールスプロモーションなどを手がけらています。社員数は233名で、うちデザイナーは55名と言うことです。設立8年目。リクルートの出版物を一手に手がけるRC(P リクルート コンピュータ パブリッシング)から分離・独立された会社で、デザインでも一流、DTPのオペレーションでも一流と言う会社を目指して設立したとのことです。

■デザイナーの育成

 そこでデザイナーの育成が課題となったのですが、ビーワークスさんでは同じテーマで応募フォーマットを統一し、若手からベテランまで同じ基準で同じ土俵の上で競い合う社内コンクール(デザイン・アワード)を実施され、デザイナーの質を上げて行かれました。第一線で活躍されている著名なデザイナーなどを外部から審査員として迎え、かなり厳しい審査をされたそうです。また、一流の方々から評価を受けたり、直接、接することで刺激を受けるメリットもあったとのことです。このような訓練や刺激を受け、 新卒者や中途採用のデザイナーだけでなく、DTPオペレータからデザイナーに転向された方も多く、メジャーファッション誌のアートディレクターとして活躍されている方もいらっしゃるそうです。

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■デザイナーの付加価値ー「仕事が早い」という魅力

小木氏:デザイナーの資質や求められるものと言うのは、デザインの質だけでない。質が良いのは当たり前。その上で、何があるかですよね。仕事が早いであるとか、顧客ニーズが汲めるであるとか。

丸田氏:仕事が早いと言う表現に抵抗を感じるデザイナーは結構多いですね。デザイナーを教育したり指導して行く中で、良いものを作るには時間がかかると言うメンバーも多い。
ただ良いものを作ると言うのは大前提。実際、仕事が早いデザイナーは顧客ニーズを的確に理解して、最初から良いものをあげて来る傾向にあります。

小木氏:雑誌の編集者としてデザインを発注する側からみても、その傾向はあると思います。
私たちは雑誌を作っていますが、やはり売れないといけない。売れるためには価値が必要。デザインも大きな価値のひとつであるし、そもそもデザインは編集者が用意したコンテンツを読者に伝えるインターフェイスの役割を果たしてくれるもの。インターフェイスが悪ければ伝わるものも伝わらなない。編集者はデザインの良し悪しを見極めなければならないですが、デザイナーの方もこちらの意図を汲んでいただいて、プラスαのものを付加してスパッと出してもらうと、すごく嬉しいですね。

丸田氏:よくデザイナーの引き出しの多さって言われますが、それはやはり今まで経験した量だと思います。例えば、一日に1ページしかできないデザイナーと一日に3ページこなせるデザイナーでは一日に3倍の経験の差がつく。それが1年間となったら、その差は膨大なものです。その差が、できるデザイナー、できないデザイナーの分れ道だと思います。
それは本人の意識の問題で、仕事を早くしようと言う意識があれば自ずと仕事が早くなっていくし、そうすることが自分の力になっていくんだと言う認識があれば、良いものを作るだけでなく、早く仕事をする、量がこなせるようになる。そう言ったこともデザイナーの力量だと思います。

■個別商品の分析

小木氏:ビーワークスさんは各媒体(商品)ごとにPL(Profit & Loss /費用対効果)をきちんと出しておられるとか。

丸田氏:はい。何百万円という商品から何千円の商品まで、いくら利益があったか、すべての商品について収益データを出しています。当然、利益がある商品もあるし、ない商品もある。収益が悪い商品は何が問題で、どこを改善すれば利益が出るのか分析しますが、そのベースのひとつは、その仕事にどれだけの時間がかかったのかという点です。ですので、デザイナー全員に一日どの仕事を何分作業したかを報告してもらい、それを金額に換算して、どの商品にどれぐらいコストがかかったかを出しています。

小木氏:そこまでしないと商品ごとの正確なPLは出せないですね。

丸田氏:そうですね。ただ、このような管理の仕方はデザイナーからはかなりの反発あります。(笑)しかし客観的な数値で自分の仕事のスピードを知ることで、次の仕事は何分で仕上げようと言う目標値になります。

小木氏:デザインはクリエイティブな仕事で自由な発想がないと良いものはできないと言うのは事実だと思います。ですが、発想の自由と仕事する時間の自由は性格が違うもの。各商品ごとにPLを正確に出すには、やはり制作時間をきちんと把握することは必要ですね。

丸田氏:誤解のないように付け加えますが、赤字でも時間をかけてやらなくてはいけない戦略商品のようなものも、もちろんあります。ただ、そのような商品は担当デザイナーと話を詰めて、きちんと理解した上で進めています。

■環境の整備

小木氏:OS9 + QuarkXpress 環境からOSX + InDesign 環境へ移行された経緯は。また、どのタイミングで切り替えられたのでしょうか。

丸田氏:InDesignへの取り組み自体は結構早くから進めていました。ver.2.0の頃だっだと思いますが、当時はまだ処理速度も遅く、メイン環境はOS9 + QuarkXpress でした。しかし、将来的にMac のOS がX になることはすでにアナウンスされていましたし、そうなればInDesignに全面的に移行すると言うことは経営判断として決定していました。スタッフにもある意味、トップダウンとして通達していました。その根底にあったのは、その生産性であり投資効果でした。InDesignのポテンシャルを分析して、これからは確実にメインフローになっていくと判断したからです。
移行した当初は作業ももたつきましたし、一時的に生産性も落ちました。しかし、現在は以前の環境より確実に生産性は上がっています。

小木氏:経営サイドとしては当然、一番効率が上がる生産性の高いツールを選択しますが、現場サイドからは拒否反応のようなものはなかったのでしょうか

丸田氏:もちろんありました。慣れ親しんだ環境だったし、当時はQuarkXpressが一番速いと信じていたので。しかし、使っていけばいくほど加速度的にInDesignに移行していきました。私自身はもう少し時間がかかるかなと思っていたのですが、世の中全般も思った以上に加速度がついて変わっていったと言う印象があります。

小木氏:さきほど、デザイナーの教育についてお話を伺いましたが、QuarkXpressの環境からInDesign環境に移った際、アプリケーションのオペレーションに関しての教育活動的なものは何かされたのでしょうか

丸田氏:していません。あくまで作っていくと言うかたちです。

小木氏:OJT(On the Job Training /仕事を通して訓練をする)と言うことですね。

丸田氏:そうですね。新しいものを覚えるときのエネルギーは、やはり出てくると思いますし、自分の能力が高くなっていると言う実感も多分あるだろうし。みんな習得する時間は早かったですよ。一時的に生産性は落ちましたが、ある程度まで使いこなせるようになると、以前の環境よりも数値的にも高くなりました。

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