以降、テーマに沿って資生堂の膨大な制作物の中から例を挙げ、具体的にお話していただきました。概略は下記の通りです。
「不況と言われるが、人と人とのコミュニケーションはむしろ増加すると思う。そして、そこに何が必要か? 原点の部分ともう一つの変化、常に自分がいる仕事場とかの環境は変化して当たり前だと思った方が良い」
「メッセージすることは大事で、社会に発信するということになる。伝わるようで伝わらない。デザインというものは人がより文化的な生活を営むため、また幸福になるためのものと私は思う」
「企業は街に貢献することが大事。資生堂はもともと化粧品メーカーではなく、薬局から始まっている。街にたいして働きかけ、呼びかけを以前から行っていた」
「東西文化融合のキャンペーンにおいて一番大事なのは国民性。例えばグローバルというのは平均的で、ビジネス面ではよいが、イメージの面から見るとむしろローカルなイメージの方が独自性があって良い。また、そういうローカルイメージが最終的にはグローバルになりうる」
「世界観のあるなしと同様に、歴史観があるのか? と考えている。例えば資生堂には伝統がある。これも困ったもので、伝統の“ 統” は精神的に革新のコアの意味で、伝統とは精神的革新を伝えることである。単に古いことをただ次に渡していくことではない。むしろ新しくなる。その時に精神的革新を失わないことがポイント。資生堂は創業136 年ですが、その間、先輩たちは常に女性のことを考えてきた。そこに膨大な知恵が存在する。もちろん失敗もある。しかしそこに同じ過ちを繰り返さないという、知恵もある」
「役割は作り出すもの。使命感をもって仕事をすることが大事。多いに背負っていただきたい。自分がなにを果たそうとするかが重要。特にインハウスクリエイターは自主性と柔軟性が必要。自主性を失うと、仕事は頼まれないとやらなくなってしまい、ひいては何もやらない人間と化してしまう。柔軟性を失わない。これは資生堂の中で起こっていることが常識になり、他が見えなくなってしまうこと。これはとても問題で、どんなバカなことでも考え、言える状況をつくることが重要」
「その企業に美を持ち込み、主張できるのがデザイナー。資生堂では資生堂書体という宣伝書体を持っている。宣伝部に入ると新人は1 年間この文字を書くことに専念する」
「企業は開発し商品をつくるデザイナーは、それにマインドを働きかけなければならない。企業そのものに使命感があり、デザイナーも当然それを持たなくてはならない」
「異業種の方との出会いを持ち続けている、様々な別の仕事に繋がったり、新発見ができたりした。また、著名な先輩デザイナーにも自らコンタクトをとって、お逢いすることができた。出会いも働きかけが必要」
最後に山形氏が担当された資生堂の企業広告CMが流され、会場全体が食い入るようにモニター画面を見つめていました。涙ぐんでいる方も多かったようです。まさにデザインのパワーや可能性を感じさせる映像でした。



